統計データに要注意! 介護労働実態調査では外国人材を評価できない

統計データに要注意!  介護労働実態調査では外国人材を評価できない

外国人介護士

統計データに要注意!

介護労働実態調査では外国人材を評価できない

 

人材が慢性的に不足する介護業界にとって、外国人材受入れの是非は重要な検討課題となっています。初めて外国人材を受入れる場合、様々なことを検討して受入れの是非を決めますが、その際には他法人の受入事例や他人の意見を参考にするでしょう。事例や意見が少数だと不安ですが、多数から導き出された統計データは信頼できると思います。

厚生労働省所管の公益法人として設立された【 公益財団法人 介護労働安定センター 】では、介護事業所に対してアンケート調査をおこない、毎年8月下旬に<介護労働実態調査>を公表しています。このアンケートには外国人材に関するものも含まれているため、多くの介護事業所が外国人材の受入れをどのように考えているのか、アンケート結果を通じて確認したいと思います。

 

<目 次>

◆ 外国籍労働者の受け入れ状況 

◆ 外国籍労働者を新たに活用する予定

◆ 外国籍労働者の働きに対する評価

◆ 最後に

◆ 外国籍労働者の受け入れ状況

アンケートに回答した介護事業所のうち、87.9%は外国籍労働者を受入れていないことがわかります。技能実習生の受入れが2.6%と最も高くなっています。

法人格別で見ますと社会福祉法人の7.6%、介護保険サービス系型別で見ますと施設系(入所系)の10.3%が技能実習生を受入れており、一定数外国籍労働者の受入れが進んでいることがわかります。

外国人労働者の受け入れ状況.jpg 

◆ 外国籍労働者を新たに活用する予定

アンケートに回答した介護事業所のうち、82.2%は外国籍労働者を新たに活用する予定がないことがわかります。

法人各別で見ると社会福祉法人の23.6%、介護保険サービス系型別で見ると、施設系(入所系)の28.5%・居住系の23.7%が外国籍労働者を新たに活用する予定があると回答しています。

 外国籍労働者を新たに活用する予定.jpg

これだけ人手不足が叫ばれている介護業界ですが、外国籍労働者の受入れ・活用に対する姿勢は非常に消極的に見えます。しかし、これには統計のマジックがあります。

 

◆ 外国籍労働者の働きに対する評価??

このアンケート結果の上位5つを見ますと、「労働力の確保ができる/53%」を除けば全てネガティブな回答になっています。

  ・ 利用者等との意思疎通において不安がある/59.1%

  ・ 生活、週間等の違いに戸惑いがある/48.2%

  ・ コミュニケーションがとりにくい/45.7%

  ・ 出来る仕事に限りがある(介護記録・電話等)/42.8%

 外国籍労働者の働きに対する評価.jpg

しかし、このアンケート結果にこそ統計のマジックが表れているのです。

そもそも、外国籍労働者の受入れが可能なのは、施設系(入所型)(通所型)および居住系の一部形態であるため、本アンケートに占める割合は最大で4,809件(55%)に留まります。また、本アンケートに回答した介護事業者(8,742件)のうち、外国籍労働者の受入れをおこなっているのは6.2%(541件)に過ぎないのです。

(最上部の表を参照:100-87.9-5.9=6.2%)

 

実際に外国人介護人材を受け入れたことが無い大多数の介護事業者が、上位5つのうち4つのネガティブな回答をしているのです。つまり、このアンケート結果は実態を正しく反映していると言えず、外国籍労働者=受入れが大変だ、という思い込みが根強くあることがわかります。

 

◆ 最後に

既に「外国人の採用に躊躇している時間はない」でもご紹介しましたが、介護人材は世界中で採り合いとなっています。また、経済成長が低く円安の日本は、外国人介護人材にとって年々魅力が低下しています。(「円安の衝撃! 選ばれなくなる日本」ご参照)

他の介護事業者が外国人介護人材の採用に躊躇しているなら、今が正に最後のチャンスと言えるでしょう。外国人介護人材の受入れ是非を検討する時間は、もうあまり残っていないと考えるべきです。