【眠り研究:第14回】介護する側から寝返り介助を見る④

【眠り研究:第14回】介護する側から寝返り介助を見る④

「眠り」研究

介助する側から見る、寝返り介助についてのお話。前回まで、必要な介助の把握をすること、介助する側の考え方、そして、介助する側が気を付けるべき身体の負担についてお話をしてきました。今回は、寝返り介助の負担を軽減する要素をまとめました。

ヒトの手で行う介助を少しでも減らすことができれば、介助される側、する側のどちらの負担も減らすことにつながります。これまでの内容と重複する部分もありますが、まとめの内容としてご覧ください。

重要なのは、褥瘡を予防しやすい環境を作ること

一番重要なのは、やはり『褥瘡予防』です。そもそも、寝返り介助は褥瘡を防ぐために行うため、褥瘡予防ができれば、寝返り介助そのものの回数を減らすことができます。


●体圧分散をさせること

一つ目は、体圧分散です。

褥瘡は体圧が身体の出っ張りのある部分等に集中して起こる、皮膚組織が壊死してしまう症状です。そのため、体圧が身体の出っ張った部分(腰骨、背骨、尾てい骨、かかと など)の一点に集中しないようにします。身体の凹凸に合わせて変形するマットレスやクッションやタオルの補助できちんと体圧分散ができれば、寝返り介助の回数も減らすことができます。

●通気性が良く、湿気を溜めない環境をつくるこ

2つ目は、蒸れ(湿気)の予防です。

寝ている時に身体が動かせないことで、寝具と身体の間には湿気が溜まります。この湿気で、肌がふやけたところに、体圧がかかったり、摩擦が起こることで褥瘡ができやすくなるのです。褥瘡予防のためにも、通気性が良い環境であることが重要です。

また、衛生面から見ても通気性の良さは重要です。

介助される側が身体が動かせない場合、どうしてもベッドや寝具の上で長時間過ごすことが多く、汗による湿気がベッドの下部にたまり、カビなどが発生することもあります。カビなどが発生する不衛生な環境は身体にも悪影響が起こりますので、できるだけ避けたいものです。


例えば、綿の布団などは吸湿性は良いものの放湿性が良くないため、こまめに干すことが難しいとカビが発生しやすくなります。その他、低反発のウレタン素材なども体圧分散には優れた特長があるものの、通気性が悪いという短所があるので、空気が抜ける構造のものを選ぶなど、工夫が必要です。


寝具の素材選びの他、湿気取りの除湿シートを敷いたり、すのこ状のベッドフレームの利用などでも通気性の良さを確保することができます。


褥瘡予防のためにも、衛生環境を保つためにも、寝具の通気性を今一度確認し、整えていくことが、とても重要です。

●寝返り介助の身体の負担を減らす環境をつくること

3つめは、寝返り介助そのものの負担を軽減する工夫です。

寝返り介助は、介助する側の全身を使って、介助される方の移動を助ける介助です。力の入れ方、支え方で負担はある程度軽減できるものの、体力勝負の介助と言えます。この負担を減らすためにも、寝返りの動きを補助する環境を作る必要があります。


例えば、寝返り補助機能のある電動ベッド、エアマットレスなどがあります。また、身体を起こす際の支えになる専用のクッションなど、介助動作をサポートする器具はたくさんあります。

これらの利用に加え、寝具についても硬さや反発力の違いで寝返りのさせやすさは変わるため、合わせて検討をしていくのはいかがでしょうか。

 ※反発力の違いで、寝返りのしやすさが変わります

ヒトの力だけで行う介助はどうしても負担が大きいため、自分の力だけで頑張らず、できるだけその負担を減らす環境づくりを整えていきたいものです。

介助する側から見る寝返り介助のシリーズはここまで。

寝返り介助は、介助される側、する側どちらにも負担がかかりますが、介助する側の負担は二の次になってしまうことが多いと思います。でもそれは、放っておいてはいけない負担です。このシリーズは、介助する側の気持ちと身体の負担を少しでも軽減するきっかけになればとお話をしてきました。


次回からはまた、違った視点で眠り研究のお話をしていきます。