【眠り研究:第13回】介護する側から寝返り介助を見る③
「眠り」研究
先日から始まった、介護する側から見る、寝返り介助についてのお話。初回は、今、必要な介助の把握をすることに重点を置いてお話をしました。前回は、介助する側の考え方についてお話しました。今回は、介助する側が気を付けるべき体の負担について、お話します。
介護の最大の敵『腰痛』
寝返り介助は、介助される人の全体重が介助する側の体にグッとかかる状況がよくあります。
これに対し、きちんと体重を体幹に乗せて支えることができればいいのですが介助の経験が乏しいと、上手く体重を受け止めることができません。また、突発的にバランスを崩してしまえば、腰、脚、手首など大きな関節を痛めてしまうことがあります。
特に腰は、多くの介護士の方が慢性的な腰痛に悩まされていたり、腰痛によって仕事を続けることができなくなった方も多くいらっしゃいます。このことからも、介助をする側にとって一番痛めやすい場所と言えます。
『腰痛』を起こさないためにも、次のことを気を付けていきましょう。
【前かがみ】【腰のひねり】の動作をしない
何か物を拾うときなど、意識せずに腰を曲げる動作をしてしまうことがあると思います。
しかし、ヒトの体は腰を大きく折るような動作に適していません。
そのため、何度も腰を曲げる動作をしていると痛みが出やすくなってしまいます。同じように、腰のひねりも本来不自然な動きですので、できるだけしないようにしましょう。
例えば、前かがみになる動作は、ひざを曲げ、下半身を低くすれば不要になることが多いです。腰をひねる動作も、下半身から体の向きを変えれば、必要ありません。本来、腰に負担のかかる動作も姿勢を整えてから行うと腰痛を起こさない対策ができます。
布団からベッド。ちゃぶ台からテーブルへ
腰に負担をかけないため介助を行うには、生活様式を変えることも一つの方法です。
布団からベッドにすれば、介助する位置が高くなるだけでなく、介助する側がしていた布団の上げ下ろしといった腰に負担のかかる家事も減ります。また、高さを変えることができるベッドの利用ができれば、さらに腰痛の負担を減らすことができます。
また、本題から少しずれますが、ご家族様も含めて、ちゃぶ台で床座の生活をダイニングテーブルと椅子の生活に変えれば、ベッドで過ごされている家族の方と視線が合いやすくなるという効果もあります。
動くスペースを十分に確保する
無理な姿勢で無理な動きをするときは、決まって、時間がないか十分なスペースがないときです。介助するときには、焦らないことと、広くスペースをとることが重要です。
介助が必要な方の生活をできるだけ変えないように配慮するため、これまで生活してきた部屋の模様替えを勝手にしてしまうのは気がひけてしまうことがあるかもしれません。でも、介助される方にとっても、十分なスペースを確保した上で安定した動きで介助を任せる方が安心できることも多いものです。
できるなら、写真や飾りものなど印象に残るものを残し、動かせるものや片づけていいものを取捨選択しながらスペースの確保を行っていくのがよいのではないでしょうか。
無理をしない
腰痛は体の不自然な動きで起こるものがほとんどです。でも、少し体の使い方を工夫してみると、負担は少なくなります。負担を感じても「えいやっ」と無理をしてしまうことで慢性的な腰痛を起こしてしまうことがあります。
また、筋力や体格は個々で違うものです。他の方ができている介助も、自分で試してみたら筋力が足りなかったり、受け止めるだけの体の大きさが無かったりと、自分ではできないこともあります。そんな時、無理をしてしまっては、腰痛だけでなく、ケガのもとになります。今、自分ができることを把握して、無理をしない判断をすることも介助を続けていくために非常に重要なことだと思います。
今回はここまで。
介助するときに起こる体の負担は、その日その時だけではなく、続き重なっていくものです。できるだけ、負担がない方法を考えながら、介助される側にとっても、介助する側にとっても負担が少ない時間を作っていければと思います。