【眠り研究:第10回】~高齢者の眠り~睡眠環境で重視すること
「眠り」研究
これまで4回にわたり『高齢者の眠り』をテーマに年齢を重ねることで眠れなくなる原因について掘り下げ、また危険な『褥瘡』についてお話をしてきました。
体の生理的な変化、体力的な変化が起こることで、眠ることが難しくなっていく。そのため、年齢を重ねるほどにより良い睡眠環境を整えることが重要になります。
また、年齢を重ねるほどに『褥瘡』の危険性が増していきます。これまでのお話で、『褥瘡』は、誰にとっても気を付けなければいけないものだと思っていただけたと思います。では、どう対処したらいいでしょうか。
年齢を重ねたら『褥瘡』対策をしっかりと
褥瘡の対処には、これまでお話をしてきたとおり、寝ている環境の通気性を良くすることや体の一点に体重がかからないよう体圧分散をすることが必要です。
寝返りが打てさえすれば、血行も促され、体温や湿度も上手く逃げ、体圧が一カ所に集中することもありません。寝返りが打てれば、褥瘡対策の多くは不要になるのです。そのため、褥瘡予防の根本的な解決には、筋力を維持できるよう、トレーニングを重ねることだとも、言えますね。ただ、どれだけ努力しても、じわりじわりと筋力は落ちていってしまうもの。そこで諦めず、寝具の見直しをしてみましょう。
上掛けを軽いものに変えたり、ツルツルと体が滑らないシーツや寝間着を選ぶといったちょっとしたことでも、寝返りが打ちやすくなります。こうして、できるところからフォローをしていくことが大切です。
高齢者の寝具選びで重視すべきこと
さて、実際に寝返りを打ちやすい寝具を選ぶには、どうしたらいいでしょうか?
今は、反発力があり、寝返りをサポートする寝具は多種多様に出ています。ネットで検索をしても、本当にたくさんの情報がヒットします。しかし、情報を調べ、見て、比べてみても、よくわからないことが多いと思います。
そこで、寝具選びの際に試して欲しいことをお伝えします。
それは、実際に『寝返りを打ってみること』。
特に、次のような自然な寝返りを意識して打ってみてください。
<寝返りの動きの一例>
仰向けの状態から横向けの状態になるとき、そのまま腕や足の力だけで体勢を変えるのは大きな負担がかかるため、ヒトは無意識に、できるだけ負担なくスムーズな動きができるよう、次のような段階を踏んで寝返りを打ちます。
(1)①⇒②のように、寝返りを打つ方向と反対の肩を上げ、頭の向きを変え、寝具への接地面を減らして重心を移動させる。(体を持ち上げる筋力)(重心を変える)
(2)③の姿勢になったら、小さな力で上半身を回転し、その回転の力を利用して下半身も回転、ひざを立て、安定した姿勢になるよう調整をします。(体を回転させる筋力)(体の柔軟性)
こうして寝返りを打ちながら、「体がスムーズに動くか?」「重心を安定してとれるか?」「どのくらい力を入れて寝返りが打てるか?」などに注目してみましょう。この点に注目しながらいろんな寝具を試してみると、その違いが判ってくると思います。
寝返りは寝ている時、無意識のうちに打つものです。だからこそ、『寝返りを打つ』ということを重要視して寝具選びをする人はとても少ないです。寝具選びで重要視されるのは、寝そべってみただけの感覚や肌ざわりといったものですが、それだけでは検討が不十分なのです。そのため、こうして実際に自分の体で寝返りを打って試してみながら、体に負担がなく、自然な寝返りを打てる寝具選びをしていきましょう。
年齢を重ねるごとに体に起こる変化を知り、良質な睡眠を続けられるよう、【寝返りを打つ】ことができる寝具選びを重要視していっていただければと思います。