介護分野で4つ目の在留資格「特定技能」が誕生

介護分野で4つ目の在留資格「特定技能」が誕生

外国人介護士 <特定技能>

人手不足が深刻な介護業界では、既に外国人介護士を積極的に採用している法人も見受けられますが、まだまだ「迷っている」法人が多いように感じます。その理由が、複数存在する外国人介護士の受け入れ方法にあると思います。更に、急いで法案を成立させた新在留資格「特定技能」の出現が、迷いに拍車をかけているのではないでしょうか。そこで、まずは特定技能について基本的な点を確認してみましょう。

特定技能の目的

「特定技能」とは、新たに設ける在留資格(外国人が日本に滞在できる資格)のことです。本当に人手不足が深刻な産業分野について、一定の専門性・技能を持ち、即戦力となってくれる外国人が日本に滞在できるようにします。

中小企業をはじめとした人手不足が深刻なため、日本は自国の経済や社会基盤を維持できない可能性があります。そのため、高度な専門性や技能を持つ外国人の受け入れに限っていた現在の在留資格に加え、ある程度の専門性や技能を持っていれば日本に滞在できるよう、条件を緩和した在留資格を創設することになりました。

受け入れが可能な分野は?

人材を確保することが困難なため、外国人労働者を受け入れて人材を確保するべき産業分野として、以下の14分野があげられています。

◇建設 ◇農業 ◇漁業 ◇飲食料品製造(水産加工を含む) ◇自動車整備◇航空(空港グランドハンドリング・航空機整備) ◇造船・船舶工業 ◇素形材産業◇電気・電子機器関連産業 ◇産業機械製造 ◇介護 ◇宿泊 ◇外食 ◇ビルクリーニング

特定技能1号とは

新在留資格「特定技能」は、1号と2号の2種類にわかれます。2号がより高度な人材向けの在留資格となります。1号のポイントを以下にまとめてみました。

1、受け入れ分野について、ある程度の知識や経験が必要な仕事内容に従事する外国人に適用される在留資格です。

2、ある程度の日常会話ができて、生活に支障が無い程度の日本語能力を持っていることが基本です。

3、日本語と技能の試験に合格しないと、在留資格は認められません。

①     日本語能力を判定する共通の試験を新設する予定です。日本語能力試験(JLPT)ですと、N4(N1~N5まであり、下から2番目のレベル)以上と認定されれば合格とみなされます。
介護分野は、職場で使われる専門用語の試験も加わります。
②     分野を管轄する省庁が定める技能の試験があります。
③     合格した分野での仕事しかできません。

4、外国人技能実習制度における「技能実習2号」を修了すれば、日本語と技能の試験は免除されます。

5、日本に滞在できるのは、通算で5年間です。 家族をつれて日本にくることはできません。

特定技能2号とは

特定技能1号よりも熟練した技能を持っていることが条件となります。管轄する分野の省庁が定める試験に合格すると、1号➤2号へ在留資格を移行することができます。

◇建設 ◇造船 分野での適用が検討されていますが、今後数年間は検討が続くことになっています。ちなみに、介護分野は2号の創設が予定されていません。

2号へ移行できれば、母国から家族を呼び寄せることが可能です。また、在留資格の更新に制限がありませんので、日本で永住できる可能性も生まれます。

雇用形態について

外国人介護士の雇用形態は、原則として受け入れる法人による直接雇用となります。農業や漁業のような季節性の強い分野では人材派遣会社による雇用が認められます。

雇用する法人には、外国人介護士が安心して日本で仕事ができるよう、日常生活・職業生活・社会生活に必要となる様々な支援をおこなうことが義務付けられます。その支援内容を適正に遂行できる能力・体制が無いと、受け入れは認められません。

自らの法人が支援を行えない場合は、出入国管理庁に登録されている支援機関に、外国人介護士の支援を委託することもできます。

 

いつからスタートするの?

2018年12月7日に、参議院で必要となる法律が成立しました。

2019年4月1日より、法律が施行されます。◇介護 ◇宿泊 ◇外食の3分野については同年4月より技能試験がスタートし、残りの分野もおおむね2019年度中に試験が開始される予定です。

どの国の外国人が来日するの?

政府は、悪質な仲介ブローカーを排除するため、送り出し国との間に政府間協定書を作成する予定です。過去の出入国実績などを鑑み、以下の9ヶ国と来年の3月までに協定書を交わす目標を掲げています。

◇ベトナム ◇中国 ◇フィリピン ◇インドネシア ◇タイ ◇ミャンマー ◇カンボジア ◇ネパール ◇モンゴル の9ヶ国

外国人介護士は低賃金で雇用できるの?

特定技能で受け入れる外国人介護士は、日本人と同様に労働関係法令や社会保険関係法令が適用されます。つまり、外国人介護士の処遇は日本人と同等以上にしなければなりません。最低賃金を下回るような残業代や、休みを与えずに連続で勤務させるなど、違法行為をした場合は関係法令に基づき、処罰の対象となります。

最後に

2018年12月の法案成立の段階では、制度の骨格しか決まっていません。

2019年4月の施行に向け、省令により詳細が決まります。

厚生労働省は、介護分野における特定技能での受け入れ人数を、5年間で6万人と推計しています。しかし、送り出し国は平均年齢が若く介護が必要な高齢者が少ないため、仕事としての「介護」を理解できる人材は多くありません。厚生労働省の目論見通りに人材が集まるのか、非常に心配です。

また、決まっていないことが非常に多く、「どうしたら外国人を採用できるのか?」「悪質ブローカーは誰が見分けるのか?」「採用に必要な費用は?」など、採用側にとって気になることが何一つ明確になっていません。新たな情報が入り次第、随時こちらの記事を更新していきたいと思います。



 

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