外国人介護士受け入れ制度のひとつEPAとは何か?その成立の背景と概要を理解する

外国人介護士受け入れ制度のひとつEPAとは何か?その成立の背景と概要を理解する

外国人介護士

EPAとは「Economic Partnership Agreement」の略称で、日本語訳にすると「経済連携協定」のこと。その協定内において経済交流・連携強化の一環として、特例的に看護・介護人材の候補者を受け入れるものです。2017年から介護業界でも受け入れに利用されることになった技能実習制度と比較すると、介護業界では実績のある受け入れ制度と言えるでしょう。
この記事ではそのEPAについての成立背景とその概要について解説をしていきます。

EPAは締結国の要請から推進された、という成立背景

EPAについて外務省の紹介ページでは以下のような記載があります。

貿易の自由化に加え,投資,人の移動,知的財産の保護や競争政策におけるルール作り,様々な分野での協力の要素等を含む,幅広い経済関係の強化を目的とする協定のこと

EPA自体は2018年8月時点で世界18か国・地域と発行・署名済みとなっており、その協定に基づいた経済交流が進められています。そうした交流のうち介護分野では特例的に介護福祉士の候補者を受け入れているというものであり、介護分野における労働力不足の解決策として成立したわけではありません。もともとは送り出し国側に、日本へ人材を送り込みたいという狙いがあり、インドネシアは2008年から、フィリピンは2009年から、そしてベトナムは2014年から受け入れが始まりました。

その背景にはインドネシアもフィリピンもEPA成立前後、国内の経済対策としての失業対策と外貨獲得の目的がありました。そのため、日本だけでなく諸外国へも国をあげて積極的に労働者を送り込んでいたのです。
2014年から受け入れが始まったベトナムも先の2国と同様、経済対策として本制度を推進しています。近年、人口の増加が著しいベトナムでは失業対策が必要となっていること、国内の産業整備に向けた技術移転が求められていること、そして同時に国民の所得増加を図れることのベトナムにとって3つのメリットがあるこの制度は重要な位置づけとみなされました。それを裏付けるように、ベトナムでは送り出す人数に目標設定がされています。

しかし、受け入れ側の日本は当初、高度なスキルを有する「高度外国人材」以外の受け入れには消極的な姿勢でした。受け入れ開始年が2008、9年というところからお気づきの方もいるかもしれませんが、10年前の日本国内では団塊世代の退職前で、労働力が供給過多な状況だったのです。確かに当時でも介護業界での労働力不足は危惧されていました。しかし、国内労働者の産業間での移転などで対応できるという見込みが前提で、外国人を受け入れる必要はないと考える声が大きかったのです。

2010年代に入ると、状況は一変することになります。団塊世代の大量退職と少子化による生産人口の減少が一気に進み、それまでの方針を転換せざるをえなくなりました。また、高齢者人口が右肩上がりの状況において、介護ニーズは当分の間、年々高まっていくことになります。こうした状況を受け、外国人の活用が手段として改めて見直されることになりました。EPAもこの流れで国内での利用が拡がっています。

EPAの概要について

EPAとは経済交流のための二国間協定であり、一方的にどちらかの国にメリットがあるのではなく、双方にとってメリットある状態を目指すものです。介護分野における人材受け入れにおいては、送り出し側にとって、雇用対策、技術移転、所得増加のような目的があり、受け入れ側にとっては人材資源の確保ということになります。EPAでの入国者を「介護福祉士候補者」とみなし、日本における国家資格取得を前提としているのもこうした背景によるものです。
また、EPAは国と国の間の約束事のため、送り出し、受け入れ双方で公的機関を設け、適切に管理がなされるように取り決めがされています。受け入れる日本においては「公益社団法人 国際厚生事業団」がその役割を担っています。受け入れスキームの透明性が高く、信頼性が高いと言われるのはこうした仕組みによるものです。

そして日本側としては、介護福祉士の資格を取得して受け入れ終了とするではなく、その後も日本国内で働き続けてもらえるように、資格取得者に対して在留資格の変更が無制限で可能な措置を設けています。この措置により、EPAで受け入れた外国人は資格を取得すれば日本国内で在留期間延長の更新をし続ける限り働くことができるようになっています。送り出し側にとっては外貨獲得や雇用対策となり、受け入れ側にとっては人材確保となるので現在は双方にとってメリットがあるのです。しかし、国の経済や社会状況は一定の時間を経過すると変わっていきます。今は各送り出し国において介護人材が多く必要でなくとも、10年後、20年後には必要となっているかもしれません。その時にはEPAの在り方もまた変わっていくことが想定されます。

まとめ

この記事で見てきたように、この10年間でEPAを巡る環境は大きく変わりました。そして先にも言及したように、今後の日本及び送り出し側の国の経済や社会状況によって環境だけでなく、制度自体も大きく変わっていく可能性もあります。
EPAを活用した介護人材の受け入れを検討する際には、経済交流の一環であるという前提に立ち、双方の国の相互発展を目指すスキームの中にあることを理解する必要があります。また、単純な人材力確保のための制度ではなく、技術移転を含めたものであることは頭の中に入れておきたいところです。



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