外国人介護士の受け入れ制度、メリットがあるのは技能実習制度?

外国人介護士の受け入れ制度、メリットがあるのは技能実習制度?

外国人介護士

これまでの記事では、外国人の介護士を受け入れるための3つの枠組み「技能実習制度」、「EPA (経済連携協定)」、「留学生受け入れ」それぞれについて抑えておくべきポイントを比較してきました。各記事においてもその都度メリットについて言及をしてきましたが、今回の記事ではそれぞれメリットを改めて整理していきます。デメリットについて言及している記事と併せてご覧頂くことで理解が高まると思いますのでぜひ活用ください。

「技能実習制度」におけるメリットについて

まず、介護分野における外国人技能実習制度に関して最大のメリットは「公的機関のチェックのもと、一定水準の人材を一定期間(3~5年)、確保できる」という点に尽きると思われます。2017年の法改正を筆頭に、多くのトピックがこの技能実習制度を巡って議論されていますが、政府では本制度を活用した外国人の確保に力を入れていることは想像に難くありません。そのため、現在検討されている内容を含め今後も制度継続のために大きく変化していくことが見込まれており、滞在期間の長期化も検討されています。実際、骨太の方針などでも介護分野の人材確保に向けた言及が盛り込まれているのは記憶に新しいところでしょう。

参考:介護分野で外国人人材の受入拡大、経済財政諮問会議(m3.com)

技能実習制度において介護分野が認可されたのが2017年11月です。まだまだ実例が少ないこともあり、不明瞭な部分が多いのも事実ですが、施設関係者の方からは前向きなコメントも目立っており、今後より一層活用されていくことは間違いなさそうです。現時点ではEPAのように入国者数の受け入れの上限規定が設定されていないため、しばらくは受け入れ人数も拡大傾向が続いていくものと思われます。

また、法改正により定められた送り出し調整機関、受け入れ調整機関への公的機関の関与により、今後はこれまで以上に入国するための基準を順守した人材が来日してくることが期待されます。しかしながら、今後先進国は高齢化が進むと予測されているため、介護分野の人材は世界的に需要が右肩上がりとなります。そうした状況を迎えてもなお、日本向けに人材を送り出す国々が増加し、人材の質・量ともに充実を図ることができるか否かは、法改正後の国内において、どれだけ魅力ある条件を提示できるかという日本社会全体の動向次第と言えるでしょう。

「EPA(経済連携協定)」におけるメリットについて

EPAについては受け入れ調整機関の記事でも言及したとおり、技能実習制度と異なり、公的機関である「公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS)」が受け入れを一手に担っていることもあり、安心した受け入れをおこなうことができます。すなわち、EPAを利用する際の大きなメリットは「制度の信頼性が一番高く、来日者は基本的に高等教育を受けた人材のため質が高い」ことです。

また、来日後もあくまで「介護福祉士の候補者」という立ち位置で、介護福祉士の国家資格を取得してもらうことが前提であり、政府からの支援も手厚いものがあります。そして国家資格を取得後、在留期間は無制限に更新でき、長期間の雇用が可能となります。そして日本人の介護福祉士と同様に施設内の介護業務だけでなく、訪問介護をできるようになるのも、一部の介護施設にとっては大きなメリットと言えるかもしれません。

また細かい点では、介護福祉士の候補者が国家資格を受験する際、特例として試験時間が通常の受験者の1.5倍となります。しっかりと試験問題に取り組むことが可能です。

「留学制度」におけるメリットについて

最後に、留学制度を受け入れに利用する場合、短期的にはほとんどメリットがないことに注意しておく必要があります。というのも留学生は来日後、日本語学校に1年間、介護福祉士の国家資格を取得するための養成学校に2年間通い、勉強します。そのため、介護施設でアルバイトをする場合でも週28時間以内と制限されます。仮に、日本語学校~養成学校を最短で卒業する場合でも、来日から3年以内に関しては受け入れ施設側にとって負担が先行してしまうことは否めません。

しかし、養成学校を卒業後は国家試験に合格せずとも暫定的に介護福祉士として登録して(2021年度卒業まで)就労することが可能となります。卒業から5年間、介護福祉士として勤続することで正式な資格を取得することができます。正式に資格を取得後は在留資格「介護」も確定します。そして在留期間は無制限に更新が可能となり、長期間就労することができるようになります。また、EPAのところでも触れましたが、日本人の介護福祉士と同様に、訪問介護をできるようにもなります。

EPAと異なる留学制度ならではのメリットは、国家資格を取得したあとは法人内での事業所の配置転換が自由なことです。もちろん本人との同意のもとですが、特養→デイサービス→訪問介護→特養といったように事業所間での異動が問題なくできます。複数の事業所を傘下に持つ法人にとってはグループ内での差配がやりやすくなる大きなメリットと言えるのではないでしょうか。

留学制度の場合、EPAや技能実習制度と異なり、受け入れにあたって、前職要件や入国時点での高い日本語能力などはほとんど求められません。(実情として「N5」レベルを要求される程度)また、留学生に対しての奨学金制度が充実するなど、3つの制度の中では一番入国のハードル自体は低い点が注目されがちです。 しかし、入国のハードルの低さが、後々で問題となってきます。この点については留学制度を巡るデメリットについて言及している記事で解説をしているのでそちらを参考にしてください。

まとめ

3つの制度のメリットをそれぞれ見てきましたが、一番メリットがある制度はどれか、というのは事業所・施設の状況によって異なってくる、というのが結論となります。また、受け入れ自体がまだまだ黎明期とも言える状態で関連する法規が今後大きく変更することも考えられ、それによりまたメリットの度合いも変わってくることと思われます。ただ、EPAや留学制度は国家資格の取得を目指しての来日になること、EPAと技能実習制度は仲介の受け入れ調整機関が入ること、といった点が異なることについては前提として押さえておくべきでしょう。

どの制度においても「外国人介護士」を受け入れる事実に変わりはありません。法人・介護施設にとって、まず一歩踏み出すことが重要であり、踏み出すための準備にはそれ相応の時間と負担がかかります。採用のハードルが低く、制度の信頼性も高めな技能実習制度からスタートするのは悪くない選択と言えるのではないでしょうか。

長期的な理想としては、どれか1つの制度に限定するのではなく、戦略的にポートフォリオを組んで人員計画に組み込むことかもしれません。それぞれのメリットがあること、そして相応にデメリットがあることを踏まえ、経営視点から判断して頂きたいところです。次回デメリットに関しての記事もぜひ参考にしてください。



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