外国人介護士の受け入れには必須。「技能実習制度」を含む3つの枠組みの背景と目的

外国人介護士の受け入れには必須。「技能実習制度」を含む3つの枠組みの背景と目的

外国人介護士

介護業界で問題になっている慢性的な人材不足。その解決に頭を悩ませる経営者も少なくありません。そこでにわかに介護業界で注目を集めているのが外国人介護士の受け入れです。実際に受け入れを始めている介護施設はまだ少数派ですが、受け入れに向けて動く施設は着実に増えています。現時点で外国人介護士の受け入れを検討中なら「技能実習制度」、「EPA(経済連携協定)」、「留学生受け入れ」のいずれかを選択することになります。誕生した経緯も目的も異なるこの3つの枠組みを比較し、「外国人介護士受け入れ」という観点からそれぞれの特徴を紹介していきます。

「技能実習制度」を活用した外国人介護士受け入れ

「外国人技能実習制度」の歴史は意外と古く、1993年に出された「技能実習制度に係る出入国管理上の取扱いに関する指針」をもとに創設されています。当初、介護領域は含まれず、農業や漁業などの一次産業や工場従事などに限定されていました。そして2017年11月1日施行の「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」において介護職種が追加されたことで、介護業界でも本制度が利用できるようになりました。

「技能実習制度」の理念は、日本の技能や技術、知識などを発展途上国へ移転することで発展途上国の人材育成に貢献することであり、介護職種においても同様のことが期待されています。すなわち、日本の介護現場で実際に働き、日本式の介護の考え方・技術・知識を習得してもらうことを目的としているのが介護職種における「外国人技能実習制度」なのです。現在は経済の発展途上にあり、国民の平均年齢が若い国々でもやがて高齢化を迎えます。その来たる時に備えて介護スキルをアップしてもらおうというのが本制度設立の趣旨となります。

また、首相官邸直下の「健康・医療戦略推進本部」では、アジア健康構想という取り組みが進められており、「アジアに紹介すべき日本的介護」について議論されています。

以下引用
アジア健康構想は、日本で介護を学ぶ人材を増やすとともに、日本の介護事業者のアジアへの展開や相手国自らが介護事業を興すことにより、日本で学んだ人材が自国等に戻った際の職場を創出し、アジア全体での人材育成と産業振興の好循環の形成を目指すもの。
引用ここまで

このような取り組みを具体化するための枠組みとして、「外国人技能実習制度」の活用が期待されているのです。今後さらに加速する少子高齢化の波を受け、本制度はより現場の状況に沿った仕組みに改定されていくものと思われます。

参考資料:「アジア健康構想」に関する取組状況と今後の方向性について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/kokusaitenkai/kenkokoso_suishin_dai2/siryou2.pdf

「EPA(経済連携協定)」における介護分野での外国人候補者受け入れ

まず知っておきたいのが、「EPA」とは「Economic Partnership Agreement」の略称であり、日本語に訳すと「経済連携協定」、すなわち特定の国や地域と経済に関するパートナーシップを結ぶことです。具体的には、貿易の自由化にとどまらず、投資活動、人材の交流、知的財産の保護や競争政策におけるルール策定などにより両国間での経済関係の強化を目的とした協定となります。その協定内において経済交流・連携強化の一環として、特例的に看護・介護人材の候補者を受け入れるのが特徴であり、単純な看護・介護分野の労働力不足への対応ではないことに注意が必要です。

また本制度の目的は、外国人に日本の介護施設で実際に就労・研修をしてもらいながら介護福祉士の資格を取得してもらうことにあり、資格取得後は制限なく在留資格を更新できます。現在、介護分野における取り組みが協定内に含まれているのはインドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国です。それぞれの国ごとに交わされた協定が異なるため、資格の要件が違うという点にも注意が必要です。

参考資料:経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れ概要
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/epa_base_2909.pdf

「留学制度」を利用した外国人介護士受け入れ

2013年に閣議決定した第二次安倍政権における成長戦略「日本再興戦略」は、2014年の改訂で「担い手を生み出す ~ 女性の活躍促進と働き方改革 外国人が日本で活躍できる社会へ」と明記され、介護分野においても外国人の新たな就労制度が検討されました。それまでの制度では外国人留学生が介護の勉強をしても日本で就労することはできませんでしたが、2016年11月18日の入国管理法の改正により在留資格として新たに「介護」が創設されました。

これにより日本国内の介護福祉士養成施設・専門学校(課程2年以上)を修了、卒業して介護福祉士などの国家資格を取得し、かつ介護事業所に従事している外国人については、在留資格を「留学」から「介護」に変更することにより無制限で在留期間の更新が可能になりました。

参考資料:在留資格「介護」の創設
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000151592.pdf

まとめ

先進国の中でも驚異的なスピードで高齢化が進む日本では、2025年には約38万人の介護人材が不足する(厚生労働省による試算より)とも言われています。この数字はもはや日本人だけで介護の現場を支えるのは限界という事実を浮き彫りにしています。

「技能実習制度」、「EPA(経済連携協定)」、「留学生受け入れ」、それぞれ創設の理念は謳われているものの、本音は日本の介護人材不足を解消する手段とみて間違いありません。今後、介護人材不足がより深刻になっていくことは先の試算でも示されており、この問題を解決する大きな柱のひとつとして「外国人介護士受け入れ」はより存在感を増していくでしょう。

3つの枠組みのうちどれを選択すべきかは、ご要望やご事情によって異なります。外国人雇用を検討しているがどうしたらよいかわからないという方には、「技能実習制度」、「EPA(経済連携協定)」、「留学生受け入れ」の違いをわかりやすくご説明させていただきます。
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