外国人技能実習制度「介護分野」での受け入れは最大で5年間の勤務も可能

外国人技能実習制度「介護分野」での受け入れは最大で5年間の勤務も可能

外国人介護士

人手不足は介護事業所経営の大きなネックになりつつあります。「日本人がダメならば、外国人技能実習制度を使って海外の人に来てもらえないか」と考える経営者もいるでしょう。しかし、自分の側の都合だけで考えてはいけません。外国人実習生にとってもメリットのある形にする必要があります。
また、外国人技能実習制度自体は1993年からあるものの、介護分野にまで対象が広げられたのは2017年です。実際上の運用は、まだ手探り段階であるのは承知しておきましょう。

外国人技能実習制度とは

外国人技能実習制度の目的は先進国である日本から途上国への技能移転です。しかし、経営者にすれば労働力需給(人手不足解消)も意識してしまうのが正直なところでしょう。

外国人技能実習制度の本来の目的は途上国への技術移転

海外からの実習生が、自分の国では身につけることができない技能を日本で学び、やがてそれを持ち帰って自分の国で役立てるのが外国人技能実習制度の目的です。
制度を定めた法律にも「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(技能実習法第3条第2項)と明記されています。

外国人技能実習制度は以前からある

外国人技能実習制度は1993年、海外進出していた日本企業の人材育成システムを参考にして始められました。当初、実習期間は最長で2年でしたが、今は3~5年にまで延長されています。これだけの期間働いてもらえるので、「調整の手段」として考えていない企業であっても、戦力として計算するのは、ある程度は当然のことかもしれません。

介護が加わったのは2017年

本当に政府が技能移転だけを目的にしているのかどうか、実は微妙なところです。
厚労省では「2025年には介護人材は37万7千人不足する」という予想を出しています。この問題が注目されるなか、2017年11月に介護分野が対象に加えられました。
また、政府は2019年4月にも最長5年間の技能実習を修了した外国人が、さらに最長で5年間、就労できる在留資格「特定技能(仮称)」をつくることを検討しています。これは、介護、農業、建設などの分野で、試験に合格すればより長く日本国内で働くことができる制度です。このように、外国人技能実習制度は技術移転というよりも人手不足への対応策として活用される可能性が高いといえます。

技能実習生を受け入れる際の要件

技能実習生の受け入れについてもほかの分野とは違う扱いになっており、厚労省からも特に指針として「技能実習「介護」における固有要件等について」が出されています。

受け入れ側の介護事業所の要件

そのなかで受け入れる介護事業所の条件が挙げられています。
・ 技能実習生の人権擁護、適切な在留管理の観点から、訪問介護施設では受け入れ不可。
・ 事業所設立から3年以上たっている。
・ 看護師、あるいは職務経験5年以上の介護福祉士を指導員としてつける。人数は実習生5人につき1人以上。

実習生となるための要件

実習生側は、自国などで、(1)介護施設あるいは居宅で、高齢者・障害者の日常生活の世話、機能訓練などの実務経験がある、(2)看護課程を修了したか、看護師資格を持っている、(3)介護士認定などを受けた、のいずれかを満たしている必要があります。
また、日本語の能力については、来日の時点で日本語能力検定試験(「財団法人日本国際教育支援協会」などが主催)のN4(基本的な日本語を理解することができる)が必要です。2年め以降に進むには、N3(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる)が要求されます。※
※ 2年目への移行条件である、「日本語要件:N3程度」については、日本政府が方針を転換し、年内にも介護現場で使う日本語に特化した新試験を導入する予定です。緩和する方針を示しており、2019年2月に厚生労働省から改正案が提示されました。N3に合格しなくても在留が可能となる条件として、「介護事業所のもとで、実習等の適切な習熟のため必要な日本語を継続して学ぶこと、学ぶ意思を示していること」を挙げています。(改正案提示のため、2019年2月1日修正)

実習生受け入れの申し込みから終了までの流れ

自社だけで手配をする企業単独型もあります。ただ、介護事業所ならば、個々の負担が少ない事業協同組合を通す団体監理型を考えておけばいいでしょう。この場合、次のような手順で進みます。

1. 事業協同組合への相談・申し込み。
2. 事業協業組合の現地提携先(いわゆる「送り出し機関」)が実習希望者を募集。
3. 応募者に対し、書類・インターネット面接・現地面接などで介護事業所自体が採用者選考。
4. 採用者に対して現地で入国前講習(半年から1年程度)。
5. 来日した後、1年目は特例法で定められた「技能実習1号」として扱われる。入国後講習(1か月から2か月、計320時間。ただし、来日前の講習内容によっては短縮あり)を受けてから介護事業所へ配属。
6. 技能検定基礎級(「認可法人・外国人技能実習機構」主催)と日本語検定N3の合格者のみ実習2年め以降である「技能実習2号」となる。※ 期間は2年間。

※ 2年目への移行条件である、「日本語要件:N3程度」については、日本政府が方針を転換し、年内にも介護現場で使う日本語に特化した新試験を導入する予定です。緩和する方針を示しており、2019年2月に厚生労働省から改正案が提示されました。N3に合格しなくても在留が可能となる条件として、「介護事業所のもとで、実習等の適切な習熟のため必要な日本語を継続して学ぶこと、学ぶ意思を示していること」を挙げています。(改正案提示のため、2019年2月1日修正)

ここまでの3年間で終了することも可能です。さらに実習4年め5年めの「技能実習3号」も制度として用意されています。これを実施するには、実習生当人が技能検定3級をすでにパスしているだけではなく、事業協同組合と介護事業所の両方が外国人技能実習機構から「優良」の認定を受けている必要があります。
講習は事業協同組合やその現地提携先などが用意します。個々の介護事業所は実習生を参加させるだけで済みます。

介護業界における技能実習生のメリット・デメリット

メリット

介護分野での技能実習はまだ始まったばかりで、実際にどういった人たちが実習生になるかなどがはっきりするのはまだこれからです。
ただ、相手国はインドネシア、フィリピン、ベトナムなどで、実習生になるのは看護師経験者や看護学校の卒業生などと現時点では予想されています。つまり、看護の一定レベルの知識やスキルがある人になりそうです。即戦力になる人材や、あるいは今までのスタッフでは手薄だった種類の人材が得られる可能性があります。
また、「しっかり学んで帰ろう」「自分の国の人の役に立ちたい」といった目的意識をはっきりと持った人たちです。この姿を見たならば日本人スタッフも刺激を受けるのではないでしょうか。

デメリット

これも「介護分野ではこれからどうなるか」といったところで、ほかの分野での例ですが、トラブルが目立っているのも事実です。
賃金の未払い・違法な時間外労働・安全性が確認されていない作業など、企業(雇用者)側の問題が目立つようです。結果、逃げるように期間途中で帰国したり、あるいは姿をくらませたりする実習生も少なくありません。
実習生の側に対しても、「技能移転ではなく単に出稼ぎのつもりで来ている人がいる」との指摘もあります。
また、実習生には日本人スタッフと同じ条件で雇用することが必要です。それに加えて、入国前講習・入国後の講習費、日本への渡航費、事業協同組合への諸費用などがかかります。世間で広まっている「安い労働力」のイメージとは逆に、むしろ割高になることもあることはしっかりと覚悟しておいたほうがいいでしょう。

人手不足解消策にするならば、外国人技能実習制度の目的を外さない形で

ここまで見てきたことからわかるように、外国人技能実習制度の位置付けは、政府でも揺れている状況です。とは言え、人手不足の解消方法と単純に考えてはいけないのは確かです。
理想を言えば、「しっかりと技能移転という目的を理解し、それに沿った運用をする。その結果、実習生たちには貴重な戦力として介護現場で役立ってもらう」というところをめざしたいものです。
実際の問題として、介護業界の人手不足は解決策が見つかっていません。安直な利用は慎みながら、しっかりと自社の人事システムに組み込むことができたならば、外国人技能実習制度が人手不足の軽減に役立つ可能性もあるでしょう。

参考:



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