イスラム教徒の多いインドネシア人雇用に特別な配慮は必要か?(1)

イスラム教徒の多いインドネシア人雇用に特別な配慮は必要か?(1)

外国人介護士

イスラム教徒の多いインドネシア人雇用に特別な配慮は必要か?(1)

現在日本は深刻な少子化、高齢化により単純労働や介護に関連する労働力不足に陥っています。今後さらにこの傾向は進み、解決策としての外国人雇用はますます重要な課題として取り上げられることになるでしょう。

有望な労働力の提供元として、フィリピン・ベトナム・インドネシアなどが挙げられますが、その中でもイスラム教徒が多く、日本と文化が大きく違うインドネシア人の雇用について、事業主の皆様からは不安や、どう対応してよいか判らないと言った声をよく耳にします。

しかし実際には、後述する気質や性格などから、インドネシア人は日本人との親和性が高く、東南アジア諸国の中でも極めて良い人材であることは、諸外国で働くインドネシア人の多さやトラブルの少なさから見ても明らかです。

グッドタイムマガジンでは回に分け、インドネシア人の特性や雇用後のトラブルを未然に防ぐために事業主が留意すべき事項などをわかりやすく説明します


<目 次>

1.国外で働くインドネシア人

2.一般的なインドネシア人の特性と雇用におけるメリット

3.一般的なインドネシア人の特性と雇用におけるデメリット

4.雇用上のトラブル事例


国外で働くインドネシア人

インドネシアでは国外で働くことは特別なことでは無く、多くの人が香港・シンガポール・台湾などで活躍しています。

職種としては水産加工業での単純労働や高齢者世帯での比較的軽度な介護を含む家政婦、遠洋漁業の乗員等、自国での労働力確保が難しい職が大半を占めます。

また何れの受入国も元のイスラム教徒は極めて少ないのですが、各国共インドネシア人がイスラム教徒ということ特別な対応はしていないのです。それでも殆どのインドネシア人は環境に順応し、大きな問題もなく就業を続けています。

日本の事業主がインドネシア人の雇用を考える際に、『イスラム教徒だから大変』と考えるのはイスラムといえばアラブ諸国をイメージする先入観からくるもので、これはインドネシア人にはあてはまらないと言ってよいと思います。

一般的なインドネシア人の特性と雇用におけるメリット

インドネシアは国内に豊富な労働力を有していますが、地方部では雇用機会が少なく、国内賃金も低いということから国外労働志向が強く、まとまった労働力を継続的に得ることができます。

個人差はありますが、一般的なインドネシア人の特性と雇用におけるメリット・デメリットとしては以下のような点が挙げられます。

まずは良い面から見ていきましょう。

《忍耐強い》

勤勉とも言えますが、インドネシア人は概ね忍耐強く、面倒な作業でも一旦仕事を覚えれば地道に根気良くこなします。

《柔和な性格》

インドネシアは多民族国家で、民族間の違いも若干はありますが、代表的な民族であるジャワ人を始め、概ねおとなしく、柔和な性格の持ち主が多いと言われています。

実際にジャワ人生活をしている日本人によると、その高いホスピタリティは特筆すべきものがあるようです。

たとえば、香港で家政婦として働くインドネシア人の数は、15万人から17万人の間で長期に亘り推移しています。

この事実からも高いホスピタリティを持つインドネシア人が安定的かつ優秀な労働力として役立っていることがわかります。

また、職場で粗暴な言動をとるような事まず有りません。

事業主は雇用にあたり国籍いかんを問わず犯罪などのリスクも考慮すべきですが、来日外国人検挙数の統計を見ても、刑法犯は他国より格段に少なく、安心して雇用することができます。

犯罪統計 令和2年1~12月犯罪統計【確定値】 より

《従順で不平、不満を言わない》

指示命令を受けたことは素直に受け入れ根気よく作業を進めます。雇用主に対して不平不満を口にする事は極めて稀です。

人間関係を大切にすることから、怒る・文句を言うのは良い事ではないと言う考えが浸透しているためですが、裏返せば不平や不満が表面化しにくいとも言えます。

事業主は日頃よりコミュニケーションをはかり、インドネシア人に対する理解を深める努力が必要です。

《高い言語習得能力》

地方出身のインドネシア人は基本的にインドネシア語と民族固有の言葉を話すためか外国語の習得が早いようです。家政婦として香港・台湾・シンガポールなどで年程度滞在し英語や広東語を流暢に話す女性多数います。

以上のような良い面がある反面、よく耳にするネガティブな特性は以下のようなものです。

一般的なインドネシア人の特性と雇用におけるデメリット

《時間を守れない?

インドネシア人は時間にルーズだと言うことを聞かれたことがあるかもしれませんが、これは少し誤解があります。約束した時間に遅れるような事があるのは事実ですが、これはインドネシア社会全体で許されている慣習であり、決して約束を無視しているとう事ではありません。インドネシアは日本では考えられないような交通渋滞や集中豪雨による冠水などが日常的に起こります。その為、時間を守ることが相対的に難しく、例えば15時に集合と決めたらインドネシア人の感覚では15時位に集合と言う理解になります。これは事前に『日本では時間厳守』と伝えておけば殆ど問題はありません。インドネシアでは時間厳守の場合は『軍隊時間でXX時』と言いますが、『日本の時間は全て軍隊時間』と説明しておけば時間は守られます。

《予測行動をするのは苦手》

日本人は仕事を進める場合、次に起きることを予測しながらプロセスを変えて行きますが、インドネシア人は概ね始めに決めた内容を忠実にこなす事に注力します。先を読んで対応するような仕事は苦手なため、その様な仕事を任せる場合は事前に細部まで十分な説明をした上、経過を管理する事が必要になります。

雇用上のトラブル事例

諸外国に於けるトラブル事例の多くは雇用時の約束が守られていないというもの(内容)です。特にエージェントを介した場合、事業主とエージェントの意思疎通が図られず、事業主が提示した条件が間違って伝わってしまい、後日トラブルに繋がったと言うケースをよく聞きます。信頼できるエージェントに依頼することが重要です。

トラブルとは少し違いますが人間関係の問題で仕事を辞めると言う事例も稀に聞きます。これは多国籍の従業員で混成された職場で発生することが多いようです。

また日本ではあまり聞きませんが 、職場の管理職がインドネシア人従業員に見下した言動を取り、従業員が一斉に退職したと言うことがありました。

しかし宗教的な事が原因となる事例は皆無と言って良いと思います。

次回は国外で働いた経験があるインドネシア人の生の声を元に、彼らが持つ本音や不満、雇用主への要望をもとに事業主が行うべき対応を中心に説明して行きたいと思います。


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