「技能実習制度」は人身売買! ベトナムに見る借金の構造

「技能実習制度」は人身売買! ベトナムに見る借金の構造

外国人介護士

「技能実習制度」は人身売買! ベトナムに見る借金の構造

「技能実習制度」は人身売買! アメリカ国務省からの指摘>と題した2021.8.9付グッドタイムマガジンのとおり、アメリカ国務省は、現行の技能実習制度を人身売買だとし、多額の借金が強制労働を生み出す素地があると鋭く指摘しています。しかし技能実習制度は日本に来て技能を身につけ、母国へ持ち帰って役立ててもらう〝国際貢献"を目的としてつくられました。日本の国際貢献とは、若者の借金なくして成り立たないのでしょうか。今回はベトナムを事例に、多額の借金を背負わざるをえない構造について確認します。


<目 次>

借金100万円の重み

なぜ多額の借金を背負うのか ~ ベトナムの事例

 ベトナム国内ブローカーへの費用

 一攫千金を夢見る若者の存在

 送り出し機関の日本人への接待費用


借金100万円の重み

日本への出国の準備等にかかる費用を用立てるために一定額の借金は致し方ないかもしれません。多少の借金はチャンスを掴むための投資と考えられたり労働意欲を高められたりするなどと言われることもありますが、中には100万円もの借金を背負って来日する実習生も存在します。100万円は、日本人にとっても決して小さな金額ではなく、ましてや、実習生を送り出す国の人々にとっては非常に大きな金額であるはずです。実習生の多くは月収2万円前後の地域から来日します(ベトナムの2020年の全国の1人当たりの平均月収は2万円)。日本人の20~24歳の平均月収が22万円程度です。日本人の若者の月収と比較すると10分の1前後の月収なのです。

借金をせずにたとえば100万円を貯めるとすると、月収を全て貯金しても4年以上必要です。日々の生活費を差し引くと、なおさら簡単に貯められる金額ではありません。

日本の20歳代の若者が1,000万円の借金を背負うことと同じです。利息も含めた金額を考えると、返済が相当の重荷になることがわかります。

なぜ多額の借金を背負うのか ~ ① ベトナム国内ブローカーへの費用

日本に滞在しているベトナム人技能実習生の人数が中国人を抜いて一番多くなったのは、2016年のことです。2020年には約21万人のベトナム人実習生が日本に滞在しており、数年で急増していることがわかります。急増するということは人材を送り出すベトナム側の「送り出し機関」も大変です。当初はハノイやホーチミンなど大都市周辺で人材を集めていましたが、徐々に人材集めに苦労するようになりました。なぜなら、近年のベトナムは経済成長が著しく所得も大幅に増加し、大都市周辺の若者にとって、日本の賃金はもはや魅力的ではないのです。

そのため送り出し機関はベトナムの地方部に目を向けますが、大都市周辺を基盤としている送り出し機関は地方部にコネクションが無いため、ブローカーに斡旋料を支払い人材を確保するのです。

なぜ多額の借金を背負うのか ~ ② 一攫千金を夢見る若者の存在

地方部の若者は都市部の技能実習生の成功事例がSNSなどで伝わっているため、高い賃金を夢見て実習生として日本行きを希望します。しかし、情報はあってもルートがありません。そこにブローカーから声を掛けられると必要経費を親戚・知人からかき集めてでもチャンスを掴もうとするのです。仮に100万円の借金を背負うとしても、日本で5年間働いて毎年100万円を貯金することが出来れば、借金を差し引いても400万円が手元に残ります。これはベトナム地方部での16年分の賃金に相当する金額なのです。

実は送り出し機関が実習生から徴収できる手数料は上限3,600ドル(約40万円)と定められています。しかし、送り出し機関が負担するはずのブローカーへの斡旋料も、様々な名目をつけて若者へ負担させているのが実状です。定められた上限額はほとんど守られていないのです。

なぜ多額の借金を背負うのか ~ ③ 日本人への接待費用

若者の借金が増える理由は受入側にもあります。例えば日本の監理組合や受け入れ企業がベトナムへ行くと、送り出し機関から大歓迎されます。往復の旅費、観光、豪華な食事、若い女性が接待するカラオケなど、これらの費用は全て現地送り出し機関が負担してくれることが多いのです。

全ての送り出し機関のことではありませんが、多くは送り出す人数が多ければ多いほど利益を上げることができるため、様々な接待を提供し、キックバックを約束して日本側の気を引こうとします。

また、日本の受け入れ企業から送り出し機関へ支払われる管理料について、その一部をキックバックするよう求める監理組合もあります。

このように送り出し機関が負担しているかのようにみえる日本側への接待やキックバックの費用は実際には実習生から様々な名目で回収することが多いのです。日本側関係者はこのような実状を強く認識し直ちに改善しなければなりません。

ここまで、ベトナムを事例として借金の構造について説明しました。技能実習制度は当初の目的である国際貢献が形骸化し、労働力不足を補う制度として公然と運用され、なおかつ日本の監理組合や受け入れ企業が受けた接待費用を名目は違うとはいえ実習生が肩代わりしている構造は知らなかったとは言えません。多額の借金の要因の一つであることを直視し、このことが労働搾取と言われる実態に確実に影響していることに真摯に向き合い改める必要があります。

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