やってわかった! 外国人介護人材の日本語が上達しない理由

外国人介護士 <特定技能>

2017年には技能実習を、2019年には特定技能を制度として作り上げ、立て続けに外国人の受け入れに門戸を開きましたが、他の業界と異なり介護業界は外国人の受け入れが難しい業界だと言われています。なぜなら、他の業界では「技術」があれば仕事をすることができますが、介護は「コミュニケーション」も必要だからです。

2017年に介護の技能実習生の受け入れが認められましたが、介護分野だけ入国要件として「日本語能力試験N4相当以上に合格」と定められています。これは他の業界よりも外国人を受け入れるためのハードルが、格段に高いと言えるでしょう。早く稼ぎたい外国人にとって、介護業界は人気が無いのも頷けます。

そんな不人気な介護業界に、わざわざ来てくれた外国人は宝石の原石です。

但し、磨き方次第で宝石にも、石コロにもなり得ますので、教育が重要になってきます。

教育の中でも、最も重要なのが日本語教育です。当社も複数の介護施設様に対して外国人の日本語教育をお手伝いしたり、相談を受けたりしましたが、スムーズに日本語が上達するところもあれば、なかなか上達しないところもありました。

では、両者の違いは何だったのでしょうか? 実は、日本語教育がスムーズにいかなかった事例には共通の課題があることがわかりました。

課題① 介護現場での教育=日本語教育だと認識できていない

介護現場で使えるコミュニケーション能力を向上させるには、介護現場で学ぶのが一番の近道です。しかし、教育担当者に、介護現場での教育が日本語教育につながるという認識を持っていただけていなかったのです。

介護現場の教育担当者が日本語の教育もするの? そんなのできるわけないよ・・・

このように考えるのは当然です。

では、課題が見つかった介護施設では、何をしていないのでしょうか?

その1つ目が、外国人にメモを取らせていなかったことです。介護現場では申し送りなどで重要な情報を共有しますが、メモを取るように指導していませんでした。これでは日本語を聞き取って書く訓練の、絶好の機会を逃しているのと同じです。

「日本人の言葉は早すぎて、何を言っているかわからない!」、そう外国人に言われたから・・・。

それなら、申し送りの担当者にゆっくりと話をしてもらうか、話の直後に外国人のメモ書きの内容を教育担当者が確認すればよいのです。

~ メモを取るように指導しない & メモ書きの内容を確認しない ~

「メモを取る」ということは、外国人に限らず介護職員に必要とされるスキル・習慣です。いや、仕事をするうえで必要とされる基本的なスキル・習慣と言っても過言ではないでしょう。若い人に対して仕事の基本的なスキルを教えることが、実は外国人にとってみれば日本語の上達につながっていたのです。

そして2つ目が、口頭での【指示・指導】と【確認】です。

口頭で指示や指導をして、確認のために「わかった?」と聞き返すと、100%近い確率で「わかりました!」と返答してきます。でも、「何がわかったか、言ってみなさい」と聞くと、全く理解していないことがよくあります。

~ 「わかった?」という聞き方をする ~

外国人は、自身のメンツや指導者に落胆させてはいけないという思いから、わかっていなくても「わかりました!」と言う傾向があります。何がわかったのか、教育担当者が外国人に丁寧に聞くこと、そして外国人に日本語で言わせることが、日本語の上達につながるのです。

課題② 目標設定の間違い

技能実習制度では入国後1年以内に日本語能力試験N3相当以上に合格する必要があると定められています。(2020年7月現在、この入国後の要件は緩和中)

また、EPAの外国人に対しても就労前にN3相当以上に合格という条件があります。

したがって、日本語教育の担当者はN3の試験合格に向けて様々なことを考えます。

あのe-ラーニングを受けてもらおう、この日本語の教師に来てもらおう、その日本語教材を買って渡そう・・・これが大きな間違いです。(そして後は本人任せ、これも間違い)

必要なのはN3の合格ではなく、【介護現場で使える日本語の習得】だということを忘れてしまいがちなのです。

実際にN3やN2に合格している外国人と日本語で会話をしても、全くコミュニケーションが取れないことがあります。なぜなら、N3やN2の試験合格のための勉強と、介護現場で必要なコミュニケーション能力を向上させるための勉強とは、内容が異なるからです。

N3に合格するための勉強が無駄だとは言いません。しかし、試験に合格するために覚えなければならないことが非常に多く、また、覚えたこと全てが仕事に役立つわけではありません。当社でも、入国直後の外国人に対してN3合格のための教育をお手伝いしたことがあります。しかし、日々の仕事のやり方と介護現場で使う日本語を覚えながら、更にN3合格に向けた勉強を並行しておこなったことで、外国人に大きな負担をかけることになりました。慣れない異国の地で仕事をしながら勉強しますので、今何が必要なのか、優先順位をしっかりと見極めることが大切です。

まとめ

今回は日本語教育において当社が経験した課題の一例をご紹介いたしました。

“日本人が正しい日本語を使えていない”とか“教育担当者と他の職員の言うことが違う”など、外国人がいなくても課題となる事例は割愛させていただきます。

日本語上達のウルトラC(ちょっと古くてゴメンナサイ)をお伝えできれば良いのですが、世界中の学者が探しても見つかっていないので、ご期待に沿うことができず恐縮です。

しかし、当社の経験からこれだけは明白です。外国人介護人材の日本語習得の早道は、介護現場で日本語を「聞く・書く・話す・理解する」こと、つまり日本語を頻繁に使わせることにあります。深く・狭く・徹底して学習し、まずは仕事がスムーズにできるようなることを目標とすべきです。仕事が安定しなければ生活が安定しないので、新たなチャレンジは難しくなります。そして、しっかりと介護現場で勉強した日本語を、横へ横へと広げる勉強をした方が(N3合格等を目指す方が)結果として近道になりました。

当社が経験した課題や成果の一部を少しでも皆様に知っていただき、外国人が早く介護現場に、日本に慣れていただけたら幸いです。

 

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