特定技能外国人介護士へ介護施設が行う支援〈1〉(出入国など)

【解説】特定技能(介護)

新たな人材確保として注目される 介護分野の「特定技能」について  Vol.8 

新しい在留資格「特定技能」では、特定技能外国人へのしっかりとしたサポートが求められています。特定技能の「介護」で来日する人材のほとんどは初めて日本にやってくる人たちですから、仕事でのサポートはもちろんのこと、不慣れな日本での生活に対しても支援が必要です。受入れ機関である介護施設が行うべき支援について、3回に分けて紹介します。今回は、出入国などの支援について取り上げます。

<目 次>

外国人介護士を日本に迎えるために        

「1号特定技能外国人支援計画」とは       

支援計画が満たすべき基準            

支援計画の作成と実施              

外国人介護士にわかる言語で支援計画を作成する  

支援計画のおもな内容(1)〜(9)       

(1)事前ガイダンスの提供           

事前ガイダンスは、いつ、どこで行うのか?    

(2)出入国する際の送迎〜誰がどこまで行うのか?

渡航の費用は誰が払うのか?           

まとめ〜新しい環境での生活の支えに       

外国人介護士を日本に迎えるために

1号特定技能外国人として日本にやって来る外国人介護士を迎えるために、受入れ機関である介護施設では、さまざまな手続きや支援を行うことになります。

自国で特定技能の試験に合格し、即戦力とされる人材とはいえ、ほとんどの外国人介護士にとっては初めての日本での就労です。日本語にもまだ不慣れであり、日常生活を送ることにも不安や心細さを感じていることでしょう。スムーズに業務に当たるためにも、できるだけ不安を和らげ、生活の基盤を整えるのは大事なことです。介護施設には、そのための手厚いサポートが求められています。

また、特定技能では転職が認められているので、待遇や生活支援を整えて外国人介護士の就労をサポートしなければ、条件や待遇の良い他の介護施設に移ってしまう可能性もあります。これは外国人も日本人も変わりありませんが、そのことを忘れないようにしたいものです。

「1号特定技能外国人支援計画」とは

特定技能の大きな特徴といえるのが、この「1号特定技能外国人支援計画」(以下「支援計画」)です。

現地で外国人介護士と特定技能雇用契約を締結すると、それに続いて事前ガイダンスを実施します。そして、受入れ機関では支援計画を策定しなくてはなりません(*)。

*受入れ機関のみで1号特定技能外国人支援を実施するのが難しい場合は、登録支援機関と委託契約を締結し、支援計画の全部を委託することも可能です。

特定技能の外国人材を受け入れる流れは、以下のようになります。

08_01_新たな外国人材受入れ制度.jpg(法務省 「特定技能外国人受入れに関する運用要領」より)

特定技能による外国人介護士(1号特定技能外国人)が来日して、介護業務を円滑に行えるように、職業生活上はもちろん、日常生活や社会生活を送る上で困らないように介護施設は支援計画を作成するだけでなく、その計画が実行できるような支援体制を整えることが法律で求められています。

介護施設は、外国人介護士を雇用するにあたり、この計画を必ず作成しなければなりません。

外国人介護士に対する支援は、必ず行わなければならない「義務的支援」のほか、これに加えて任意的に行う「任意的支援」があり、支援の項目は具体的に掲げられています。

介護施設が作成する支援計画には、すべての義務的支援の記載が必要で、また義務的支援をすべて行わなければ支援計画を適正に実施していないとみなされます(*)。

*技能実習2号等から特定技能1号に在留資格を変更した場合などで、客観的状況に照らして明らかに不要な場合を除く。

○法務省 1号特定技能外国人支援計画書 http://www.moj.go.jp/content/001288172.pdf
○法務省 1号特定技能外国人支援計画書(記載例)http://www.moj.go.jp/content/001289000.pdf

支援計画が満たすべき基準

支援計画には、満たすべき基準が細かく定められています。

外国から日本への送迎や日本での住居や手続きについて、また生活面でのさまざまなシーンに関して、具体的に行うべきサポートが決められていて、これらすべてを支援計画に記載しなくてはいけません。

例えば、支援の内容については、以下のような内容が求められています。

【支援計画の内容】
・入国前に留意すべき事項を情報提供する
・出入国に際しての外国人の送迎
・住居や預貯金口座の開設、携帯電話、生活に必要な契約に関する支援
・入国後の生活一般に関する支援、届出等の手続の支援
・生活に必要な日本語を学習する機会の提供
・相談・苦情対応、助言・指導等を講じること
・外国人と日本人との交流促進の支援
・外国人との定期的な面談の実施 など

支援計画の作成と実施

支援計画を作成するのは、雇用契約を結ぶ介護施設です。ただし、介護施設は契約によって支援計画の実施を他者に委託することができます。

このうち、「登録支援機関」と委託契約し、支援計画の全部の実施を委託する場合には、介護施設は支援計画を適正に実施できる基準にあるとみなされます。しかし、この場合以外は、介護施設が自ら支援計画を適正に実施できることが求められています。

また、介護施設が支援計画の実施を登録支援機関に委託した場合でも、その介護施設の体制では実効性のある支援ができないと判断された場合には、介護の特定技能外国人の受け入れが認められないことがあります。

介護施設が登録支援機関に支援計画の実施を委託する場合でも、支援計画の作成は介護施設で行うことになります。この際、必要に応じて登録支援機関が支援計画の作成の補助をすることは認められています。

また、介護施設が支援計画の実施を登録支援機関等に委託する場合は、支援計画に委託の範囲を明示しなくてはいけません。

外国人介護士にわかる言語で支援計画を作成する

支援計画については、日本語で作成するほか、外国人介護士が十分に理解することができる言語で作成することが定められています。十分に理解できる言語は必ずしも外国人介護士の母国語には限らないとされていますが、本人が内容をしっかり理解できる言語ということなので、実際には、ほとんどの場合は母国語が必要になります。

そして、外国人介護士が十分理解したことについて署名を得る必要があります。

外国人介護士とのコミュニケーションを円滑に行えることを前提に、場合によっては翻訳機(ポケトークなど)の活用も可能です。しかし、込み入った相談や苦情対応等の場合には、通訳人の介在が必要になるでしょう。

これらの支援に関する費用については、外国人介護士に負担させてはいけないと定められているので、介護施設が負担することになります。

支援計画のおもな内容(1)〜(9)

介護施設が策定する支援計画に含むべき、おもな内容は以下です。

[1号特定技能外国人支援計画の内容等]
(1)事前ガイダンスの提供
(2)出入国する際の送迎
(3−1)適切な住居の確保に係る支援
(3−2)生活に必要な契約に係る支援
(4)生活オリエンテーションの実施
(5)日本語学習の機会の提供
(6)相談又は苦情への対応
(7)日本人との交流促進に係る支援
(8)外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援
(9)定期的な面談の実施、行政機関への通報

それぞれの内容について、これから詳しく解説していきます。
今回は、(1)(2)について取り上げます。

(1)事前ガイダンスの提供

介護施設は、特定技能雇用契約を締結したら、1号特定技能外国人に係る在留資格認定証明書交付申請の前(*)に、外国人介護士に対して、情報提供(ガイダンス)を実施することが決められています。このことも支援計画に記載しなくてはいけません。

事前ガイダンスで情報提供する事項は、以下のような内容です。

[事前ガイダンスの内容]

・特定技能雇用契約の内容
 →契約書や雇用条件書について説明し、わからないことがないか確認します。
 →この事前ガイダンスの内容と実態とが異なる場合、外国人の不満が生じるので、しっかりと説明し、納得させることが重要です。

・外国人介護士が日本で行うことができる活動の内容
 →特定技能の在留資格で入国する場合、同一分野での仕事しかできません。例えば「介護」で入国した場合、宿泊業や外食業など他業種の仕事では働けないことを伝えます。

・日本への入国に当たっての手続きに関すること
 →ビザの取得に関することなど。

・保証金等の支払いや違約金等に係る契約を現にしていないこと、将来にわたりしないことの確認
 →日本に来る外国人だけでなく、家族・親戚等の関係者に至るまで契約をしていないか、確認が必要です。

・特定技能契約の申込み取り次ぎや特定技能号の活動の準備で外国の機関に費用を支払っている場合は支払った費用の内訳などを確認
 →外国の機関に費用を支払うこと自体は、各国の法律に基づいていれば違法ではありません。しかし、なかには法律の上限を超えていたり、違法な費用を支払っている場合があるので、確認をします。

・1号特定技能外国人支援に要する費用を当該外国人に負担させないこと
 →支援に要する費用を負担させてはいけませんが、日本への渡航費・家賃・水道光熱費など実費として必要なものは負担させてよいものもあります(事前の合意が条件)。何がダメなのかを、よく確認する必要があります。

・入国のルートや送迎について
 →渡航ルートや荷物の個数・重さによる料金超過の注意、出発時と到着時には担当者が対応することなどを説明します。

・住居の確保に係る支援の内容
 →具体的にどのような住宅が用意されているのかを説明します。
 →住宅の契約内容の説明(自社保有社宅か借り上げ社宅かなど)
 →住宅に用意されているものの説明(Wi-Fi環境、布団、家具家電、食器など)
 →住宅利用に際しての主なルール・規則の説明(水光熱費は頭割り、男子禁制、同居人以外の宿泊や居住の禁止など)

・相談や苦情の申し出を受ける体制
 →相談を受け付ける担当者や責任者の紹介、連絡先の伝達などを説明します。

事前ガイダンスは、いつ、どこで行うのか?

事前ガイダンスは、1号特定技能外国人に係る在留資格認証明書の交付の申請前に行います。
対面もしくはインターネットによるテレビ電話などを用い、本人であることの確認を行った上で実施します。本人確認ができないため、書面やメール送信のみによる実施は認められません。

ガイダンスを行う際の言語は、外国人介護士が十分に理解できる言語(=母国語)で行います。

[任意的支援]
介護施設は、義務的支援として提供する情報に加えて、次の事項について任意的に情報の提供をすることが考えられます。

・入国時の日本の気候、服装
 →東南アジア諸国からの人材の場合、日本の冬の寒さや乾燥に慣れていないので、衣服やマスク着用などの注意喚起が必要です。

・本国から持参すべき物、持参したほうが良い物、持参してはならない物
 →持参すべき物:自分の体に合う・使ったことのある薬、辞書、スマートフォンなど。
 →持参したほうが良い物:調味料、自分の口に合うインスタント食品など。
 →持参してはいけない物:生鮮食品、ソーセージなどの加工肉(日本への持ち込みが禁止されている物)

・入国後、当面必要となる金額及びその用途
 →入国予定日~給料の締日~給料支給日までの時間差を考えて、生活に必要な金額をあらかじめ算定しておく必要があります。

・介護施設から支給される物(作業着等)
 →仕事に必要だけれど介護施設で支給されない物(靴など)があれば、伝えましょう。作業着などはあらかじめ採寸したり、身長や体格から合う大きさの物を用意しておきましょう。

事前ガイダンスを実施した場合には、確認書を外国人介護士に示して、署名を得ることも定められています。

事前ガイダンスを実施した後、たとえ就労開始前であっても、外国人介護士からの相談があれば適切に応じることが望まれます。

初めて日本で暮らすことになる外国人介護士がほとんどですから、生活に関して不安があるのは想像に難くありません。渡航前にできるだけ心配を解消しておくことが、新しい生活のスムーズなスタートにつながることでしょう。

○事前ガイダンスの確認書
http://www.moj.go.jp/content/001288050.pdf

(2)出入国する際の送迎〜誰がどこまで行うのか?

外国人介護人が来日する際には、現地を発ってから日本に到着するまでの送迎は、どうなるのでしょうか。その準備をするのは、受入れ機関である介護施設になります。

[義務的支援]
入国に際しては、外国人介護士が上陸の手続きを受ける港、または飛行場と介護施設(または外国人介護士の住居)の間の送迎を行うことが求められます。

また、出国する際には、外国人介護士が出国の手続き受ける港や飛行場まで送迎を行うことが求められます。その際、出国の送迎では、単に港や飛行場に送り届けるだけではなく、保安検査場の前まで同行し、外国人介護士が保安検査場に入場するのを見届けなくてはいけません。

この義務的支援は、一見すると来日した外国人が迷わないように手厚い送迎を要求しているように思えます。しかし一方で、入国して勝手にどこかに行ってしまって不法滞在者とならないように、日本に来たらすぐに確保すること、また帰国の際には日本に戻れないエリアまでしっかり見送るように、と示しているようにも受け取れそうです。

[任意的支援]
入国する際の送迎については、技能実習2号から特定技能1号へ在留資格を変更した外国人がすでに日本に在留している場合には、この支援の対象となりません。しかし、その場合でも、介護施設等の判断により、日本内の移動について送迎を行うことや、日本内の移動に要する費用を介護施設等が負担することは差し支えないとしています。

送迎を実施しない場合には、外国人介護士が円滑に介護施設まで到着できるよう、日本における交通手段や緊急時の連絡手段を伝達しておくことが望まれます。

渡航の費用は誰が払うのか?

外国人介護士の送出しに必要となる費用は、いったい誰が払うのでしょうか? 送出しに必要な費用とは、例えば渡航費用のほか、渡航前の技能や日本語の教育費などが想定されます。

介護施設は送出しをする国の法令やガイドラインを踏まえて、その全部または一部を負担することが推奨されています。ただし、送出し国によっては、認定された送出機関を通じてのみ受入れが許される場合があり、送出しに必要な費用についてもガイドライン等で公表されている場合があるので注意が必要です。

「特定技能基準省令の概要」では、日本で就労するための渡航費や教育費は外国人材が支払うことになっていますが、介護施設がその負担をするのはかまわないとされています。

しかし、実態として人材獲得競争が激しい分野では、渡航費や教育費を外国人材に負担させようとしても難しいことがあります。というのは、他社が人材を確保するため、外国人介護士に費用の全額負担を申し出るケースがあるからです。そのため、思ったように外国人材が集まらないことが考えられます。
日本側の都合だけでなく、人材マーケット全体を俯瞰して対応を考える必要があるのです。

「1号特定技能外国人支援計画」の内容等(3—1)〜(9)は次回以降に続く。

まとめ〜新しい環境での生活の支えに

人が暮らしていくには、さまざまな決まりや約束ごとがあるものです。それは日本でも海外でも同じでしょう。しかし、これまでの環境とは全く違う日本で、ましてや慣習の違いもあるなかで生活をスタートするのは、想像するだけでたいへんなことです。

日本での初めての就労であり、新しい環境、そして異文化で生活をすることを踏まえて、外国人介護士への手厚い支援が望まれます。外国人介護士をきめ細かくサポートすることは介護施設への信頼につながり、それは仕事への意欲にも結びつくのではないでしょうか。

次回は、介護施設が行う外国人介護士への支援ついて、生活面や各種契約、オリエンテーションの実施などについて取り上げます。

(参考)
○外国人生活支援ポータルサイト(法務省)
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri10_00055.html



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